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2001年5月17日(木)稿
「合併手続」における
「資本減少公告」の要否に関する解釈の推移
佐々木 正 己
【1】 総論
「吸収合併」に際し、「合併前の当事会社の資本の合算額」よりも「合併後の資本金の額」
が小さくなる場合に、どの場合に「資本減少公告」をすべきかについて、時系列的に次のよう
な説が唱えられてきた。
【2】 1958年(昭和33年)大隅健一郎説
「登記研究600号」平成10年1月30日 株式会社テイハン 発行
「合併における債権者保護手続について」69〜89頁
法務省法務総合研究所総務企画部付検事 鳥本喜章(とりもとよしあき)
「自己株式の消却による資本減少と合併による存続会社の資本増加を合わせた結果、存続会
社の資本額が合併前より減少する場合は、合併手続の債権者に対する異議申述公告には合【改
頁】併をなす旨と資本減少をなす旨とを併記すべきであるが、自己株式の消却による資本減少
と合併による存続会社の資本増加を合わせた結果、存続会社の資本額が合併前より増加する場合には、
合併手続の債権者に対する異議申述公告の中に資本減少をする旨を併記しなくても、不適法ではないとする
見解(大隅健一郎「会社の合併と自己株式の処理」商事法務八七号[一
九五八年]二頁)」(鳥本喜章「登記研究600号」87〜88頁)があった。
【3】 1970年(昭和45年)黒木学説
「登記研究600号」平成10年1月30日 株式会社テイハン 発行
「合併における債権者保護手続について」69〜89頁
法務省法務総合研究所総務企画部付検事 鳥本喜章(とりもとよしあき)
「合併手続の中で自己株式の消却による資本減少を伴う場合については、合併手続の債権者
に対する異議申述公告には合併をなす旨と資本減少をなす旨とを併記すべきであるという見解
(黒木学「会社の合併とその登記手続(1)」登記先例解説集一〇巻五号[一九七〇年]八八
頁)」(鳥本喜章「登記研究600号」87頁)があった。
【4】 1984年(昭和59年)民事局第四課長回答
昭和五九年三月八日2登(1)第五五号横浜地方法務局長照会、昭和五九年三月
二八日付民四第一七三三号民事局第四課長回答
(照会)
この度、甲株式会社を存続会社とし、乙株式会社を消滅会社とする吸収合併を行い、合併に
際して、乙の有する甲の株式を消却し、その株式の数に対応する資本の額を減少する合併によ
る変更の登記の申請がありました。この登記申請書の添付書類として、甲・乙が合併する旨の
公告をしたことを証する書面は添付されておりますが、資本減少に関する公告をしたことを証
する書面の添付がなく、また、前記合併公告中にも資本減少に関する事項の併記はなされてお
りません。
この場合、資本減少に関する公告をしたことを証する書面の添付がないものとして受理すべ
きでないと考えますが、反対に解する説もあって、受否につき決しかねておりますので、何分
の御指示をお願いします。
(回答)
本月八日付け2登(1)第五五号をもって照会のあった標記の件については、貴見のとおり
と考えます。
【5】 1984年(昭和59年)須藤純正説
平成9年9月19日付け法務省民四第1709号民事局長通達が発出される前の通説(須藤
純正説)については、次のように、理解されていた。
≪河本・菊池ほか・前掲(注10)座談会「合併に関する商法改正に伴う実務上の対応」に
おいて、実務界の村松洋平山一証券経済研究所常務取締役は、昭和五九年三月二八日民事局第
四課長回答との関係で、「これを敷衍して、消滅会社と存続会社の合計資本が合併後下回ると
いうような場合は、同様に資本減少の手続が要るのだと理解していたのですけれども」と発言
している(商事法務一四六五号三〇頁)。≫(鳥本喜章「登記研究600号」平成10年1月
30日株式会社テイハン発行「合併における債権者保護手続について」8頁)。
【6】 1997年(平成9年9月19日付け法務省民四第1709号民事局長通達)
「なお、合併による資本の増加額は、法第四一三条ノ二の規定する限度額の範囲内であれば
足りることとされたため、存続会社の資本の増加額が消滅会社の資本の額より少ない場合でも、
資本減少の手続をとる必要はない(昭和五九年三月二八日民事局第四課長回答参照)。」(同通
達 第2 株式会社に関する改正 1 合併に関する改正(8)資本の限度額の制限)
【7】 全部否定説
上記に引用した通達により、「昭和59年3月28日付民四第1733号民事局第四課長回
答」も否定され、「須藤純正説」は、完全に否定されたものと一時、解釈された(全部否定説)。
「たとえば、存続会社の資本が一億円あって、合併によって九、〇〇〇万円にするという場
合は減資だと思うのですけれども、そうではない場合は、あえて減資だという必要はない」(菊
池洋一法務大臣官房参事官発言「商事法務1465号」平成9年8月5日発行「座談会
合併
に関する商法改正に伴う実務上の対応」30頁)。
【8】 「一部否定説」
現在の通説は、「昭和59年3月28日付民四第1733号民事局第四課長回答」を肯定し
たうえで、「須藤純正説」を否定したものと解釈されている。
(1) 「早貸説」
「合併後の貴社の資本の額が合併前の貴社の資本の額1億円とA社の資本の額5,000万
円を合算した1億5,000万円に満たないとしても、必ずしも、資本減少の手続を行う必要
はありませんが、合併に際してA社から承継した貴社の自己株式を無償消却し、その株式に相
当する資本の額として500万円の減資を行うということであれば、貴社が合併に際して発行
する新株について3,000万円を資本に組み入れられることにより、結果として存続会社の
資本の額が2,500万円増加することとなる場合であっても、資本減少の手続を省略するこ
とはできず、そのような場合の合併による変更登記の申請書には、資本の減少に関する公告を
したことを証する書面の添付が必要となる」(早貸淳子法務省民事局第四課補佐官「商事法務
1479号」平成10年1月5日社団法人商事法務研究会発行「存続会社が合併に際してする
資本減少の公告」104頁)
(2) 「鳥本説」
「したがって、今回の商法改正における四一三条ノ二の規定の新設に伴って、右のような解
釈指針が示された以上、今後は、前記の事例1のように、合併手続と並行して合併によって取
得した自己株式の消却分に見合う資本減少が現実になされている場合は別として、前記の事例
2のように、合併後の存続会社の資本額が合併当事会社であるA会社とB会社との資本の合算
額よりも少ないという場合については、会社の債権者に対する異議申述のための合併公告の中
で、合併をなす旨と併せて資本減少に関する事項を記載して公示する必要はないことが明らか
となったといえる。これは、これまでの実務上必ずしも明確でなかった点について、統一的な
指針が示されたものであり、実務上大きな意味があるといえよう。」(鳥本喜章「登記研究60
0号」平成10年1月30日株式会社テイハン発行「合併における債権者保護手続について」
85頁)
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